「確か、幻の岩井俊二案ヤマトだと、戦艦大和が沈んだときには既に波動エンジンが付いていて、宇宙戦艦への改造の布石としてわざと沈んだような話だったような……」
「それがどうした」
「ヤマト2199のことを考えると、実はもっとも綺麗な解釈は、全長333メートル48センチ砲搭載の戦艦大和が船体の形を維持したまま沈没することなのだ」
「なぜサイズが大きくなるの?」
「波動エンジン装備の宇宙戦艦への改造ベースとして改設計させられたのだろう。誰だか知らないが黒幕に」
「わあ。何でも矛盾を押しつけられる黒幕って便利!」
オマケ §
「分かってきたことがある。今の自分が立っている業界との距離感と同じぐらいの距離感を、自分より数年年上の人たちは1980年代前半ぐらいに経験している。そのとき、時間と行動力があれば、アニメ制作会社に入り浸って、身内だか助っ人だかファンだか分からない集団を形成して、巨大ロボットアニメのやられメカをデザインして恐怖の線減らしに遭って、いつの間にか業界人……」
「じゃあ、君もこのまま業界人を目指せよ」
「無理」
「なんで? 時間と行動力が無いから?」
「それもあるけど、こういうことはニーズとシーズが合致したときしか物事が動かない。現実問題として、1980年代前半というのは、ヤマトブームとファーストガンダムを受けて、アニメのクオリティアップが期待されたものの、旧東映動画系の高品質劇場版アニメーション映画をやってきた人たちを除けばかなりの割合が対応できない時代だった。そこでは、何か新しい人材があちこちで必要とされたのだ。そこで、向こうからホイホイやってきた勘違いしたマニアを掬い上げてフィルターで選び取ってちゃっかり活用しちゃったのだろう」
「今だってアニメはダメじゃん」
「当事者はダメだなんて思ってないよ。それに、スクール商法で追加生産される新人アニメスタッフは尽きることが無いんだ」
「彼らがニーズを満たしてしまうので、今さら君の出番は無いわけだね」
「そこであえて『君の力が欲しい』と言ってきたら考えるけどさ」
「自分から熱心に営業かけるような状況じゃないってことだね」
「体力も金も時間もないので、ある程度の勝算が得られないと、なかなか行動には出られないさ」
「じゃあさ。もしも、若い頃に同じような状況になったら、アニメ制作会社に入り浸って身内だか助っ人だかファンだか分からない集団の仲間入りしたかった?」
「それは微妙だなあ」
「なぜ?」
「その結果として幸せになれたかと言えば、それは大いに疑問だ」
「本当にそう思う?」
「思う思う。世の中、そんなにストレートで素直じゃない。しかも若い身ではおそらく乗りきれない」
「若いと乗りきれない? なぜ?」
「人生経験が足りないと良い脚本なんて書けないからさ」
「ほんとかよ」
「小説で言ったら、少しでも意味があるものを書けるのは35歳から。本当にものになってくるのは45歳以降だろうね。シナリオが違うなんて思うなよ」
「分かった分かった。理屈はもういいよ」